言語聴覚士がお勧め「ご家庭で役立つケアスキル」
【言語聴覚士の業務について】
言語聴覚士は言語障害(失語症や構音障害)、食事摂取や飲み込みに問題が生じる摂食嚥下障害にお悩みの利用者様への機能訓練を行いますが、それ以外に下記のような内容も行っております。
・口の中を清潔にする”口腔ケア”
・食事の形態が適かどうかを評価する”食事評価”
・水分の摂取方法やどの程度トロミが必要かを評価する”飲水評価”
・ご家族が安全に食事の介助を行えるように指導する”食事介助指導”
・失語症や構音障害により意思伝達が難しい方とのコミュニケーション方法を
助言する”コミュニケーション指導”etc
今回は言語聴覚士による業務の中で「家族指導」に焦点をあて、「指導を受けて良かった」とお声をいただいた内容を2点お伝えしたいと思います。
①食事介助中にむせてしまった時の対応
むせてしまった時は食事介助の手を止めてしっかり咳払いをするよう促しましょう。咳は気管に入った唾液や痰、飲食物を口腔内や食道に戻すための防御反応です。咳をしている間に背中を叩いてしまうとかえって気管の奥に押し戻すことになってしまう為、背中を叩くのは厳禁です。
→背部叩打法は窒息時の対応としては有効ですが、イメージが混同して誤嚥時にも背中を叩いてしまったり、「むせているから何とかしてあげなきゃ」という気持ちから叩いてしまう方が非常に多いです。
②失語症で言葉が出ない方との上手なコミュニケーション方法
失語症の方の中には言われていることは理解は出来ても、自分が伝えたい内容を声に出して発することが難しい方がいます。そのような方と上手くコミュニケーションを図るにはオープンクエスチョン(開かれた質問)とクローズドクエスチョン(閉ざされた質問)を意識することが重要です。
オープンクエスチョン
相手に回答を委ねて幅広く答えることのできる質問のこと。5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)で始まる質問形式でWh質問とも呼ばれます。幅広く答えられる反面、失語症患者にとっては自由度が高すぎて返答がとても難しくなる。
クローズドクエスチョン
返事をしやすいよう返答の幅を狭めるような聞き方をする。選択肢の中から選ばせる”選言質問”や、はい・いいえで答えられる”Yes-No質問”がある。
例)好きな食べ物を知りたい時
Wh質問:〇〇さんの好きな食べ物は何ですか?➡「えーと…あの…ダメだ」
選言質問:和食が好きですか?それとも洋食?➡「あ…和食!」 肉料理?それとも魚料理?➡「さ…かな」
Yes-No質問:お寿司ですか?➡「そう!お寿司」
脳梗塞や脳出血など、脳血管疾患により障害を受けた部位によっては言葉を聞いて理解することが難しくなってしまう方もいます。中には繰り返し質問されることが負担となってしまう方もいます。また、日常会話に問題はなくても、読み書きが難しくなる方、計算が難しくなる方など症状の現れ方は人によって様々です。その時々の症状に合ったコミュニケーション方法の確立や訓練内容の立案を行うことも重要です。